わいはわいわいでいいわい

※全てフィクションです

僕は文章が書けない

5月10日23時59分、学振の学内締切を迎えた。人生で初めて書いた申請書で正直かなり大変だったが、個人的には良い経験を積めたと感じている。学振を書く中でいくつか思うことがあったので書き残しておく。

1. 文章には書き方がある

学振を書く中で文章には書き方があるということを知った。ここで使った「文章」という言葉は正確ではない。正確に言うと、論文やエッセイなど人に正確に理解してもらう必要がある文章のことを指している。私も生まれて今年で25年目。これまでいくつも文章を書いてきたので文章は書ける。しかし今回学振を書く過程で「文章」を書くことができないことを知った。文章を書く中で私が最も理解していなかったことは、段落という概念とは何かということと段落の第一文目の重要性だった。このことを理解するだけで自分の作る段落と文章への捉え方が変わり、まだマシな文章が書けるようになった(ような気がする)。とはいえまだまだ「文章」がうまく書けるようになったとは思わないのでこれからも精進したい。ちなみに、指導してもらっている先生(以下、先生)から紹介してもらったこのサイトを読んで文章の書き方を知ることができた。

 

2. 論文を読む理由

問いは全て研究計画の基盤となり、問いがなければ研究は始まらない。今回私は先生の研究対象に関する先行研究を読んで浮き上がってきた疑問をもとに学振を書いた。当然初手で論文を読んだ。疑問を浮き彫りにするためには既知と未知を整理しなければならないからだ。ただ諸事情*1があって準備期間が短かったので十分に先行研究を読んだかと問われると、私は自信を持ってYesとは言えない。ただ研究テーマを探す過程である著者の論文を2000年代から追って読んでいると、年を経るにつれて少しずつ既知の範囲が広がっていくのを感じた。恥ずかしながらこれまでこういう読み方をしてこなかったこともあって、この体験自体が新鮮に感じられた。このように研究テーマを立ち上げる段階で分野の状況を知るために論文を読まなければいけないことを実感した。次に論文を読むことの必要性を実感したのは実際に中身を書き始めてからだった。自分の立てたテーマを研究する理由や意義、その手法などについて書く時、その根拠が随時必要になり*2、その根拠は論文から引っ張ってこなければならない。このような場面が何度もありその度に検索探すということをしていた。このように論文を読まなければ、今何が分かっていて何が分からないのか、何を研究するのか、なぜ研究するのか、どうやって研究するのかということに答えることができないのである。問いは全て研究計画の基盤となる。故に論文を読まなければならないのである*3。今回学振を書くことによってなぜ論文を読まなければならないかということを実感を伴って理解することができた。

 

3. 学振のすゝめ 

学振を書くということに挑戦して良かったと感じている。1と2で書いたことを感じ学ぶことができたということが価値あることだと思うし、何よりも私は学振作成を通して、研究者になるために必要なこと(研究計画を立て人に伝わる文章を書く)を学ぶことを主目的にしていたので目的を達成できたと思っている。
実は、M1の時から、博士課程に進学するしないに関係なく学振を書くことを決めていた。大学院の入学願書を作ることさえ面倒だと感じてしまう自分が学振を書くことをなぜここまで頑なに決意していたかは今も謎であるが、何か得られるものがあるだろうと感じていたのだろうと思う。そして実際に多くのことを得ることができた。
もし後輩に学振って書いた方が良いんですか?と質問されたら書いた方が良いと言うと思う。学振ハイ*4になっているのかもしれないが、誰にでも正確に伝わる文章の書き方や自分の主張を伝える文章と論理の構成を学ぶ上では絶好の機会である*5。おそらく1回目は失敗して学ぶ回になり、2回目以降からが自分のトレーニングの場になる。もし練習して上に書いたような能力を身につけたいなら「文章」を書く機会は多い方がいい。だから学振という機会は良い機会だと思う。正直自分も先生も疲れるし時間も手間もかかる。一言で言うと、面倒くさい。それでも十分勧めるに値する経験だったと思う。

 

4. 終わりに

学振ハイになっている部分もあるが、以上が素直な感想である。学振を書くことを自分自身決め込んではいたが重ねて薦めてくれた先輩や、GW中にもかかわらず夜中に何度も自分の稚拙な申請書を添削してくださった先生には本当に感謝している。また、ギリギリまで修正していたせいで終電がなくなり歩いて帰ろうとしていたところを、大学の駐車場から出てくる車を呼び止めて下宿の近所まで送ってもらったことも良い思い出になった。送っていただいた先生にも感謝の言葉しかない。
ただ一つ愚痴を言わせてもらいたいこともある。それは学内締切についてである。実は自分の知る限り、学内締切は大学によって異なる。自分の大学はほとんどの大学より2週間早い。また自分の大学より3週間遅い大学もある。自分の知らない事情もあると思うのでこれ以上は何も言えないが、博士学生の生活に関わる学振なのだからそこらへんの条件は整えるべきではないだろうか。主要大学と地方大学における博士進学状況の違いから生じる情報や環境の格差はともかく電子申請なのだから締切は一律にできるのではないかと思う*6

最後が愚痴で終わってしまったが良い経験だった。以上。

*1:現所属は全員が独自のテーマを探し研究するというスタイルを取っており私もM1前期を費やして研究テーマを探し研究した。しかし研究計画の脆さへの不安や因果に踏み込んだ研究がしたいという願望もあってM2から先生の研究テーマを一緒にやらせてもらうことになった。

*2:先生には「本当にそうなの?」というコメントをたくさん入れてもらった。

*3:”巨人の肩の上に立つ”とはまさにこのことなんだろう...。

*4:学振を書き切って一丁前な顔をしている様子。

*5:卒論・修論の作成も同様の機会になるだろうが卒論を書かないところも少なくないと聞くしガチ論文を書く機会がある人はさらに少ないことを考えると多くの人にとって練習する機会は十分ではないと思う。

*6:ちなみにこのことをボスに言ってみると、「締切が遅くなっても結局ギリギリまでやらないで同じ状況になるんじゃないの?締切が分かってるんだからそれまでに準備するのも大切なことだよ。」と言っていた。自分を思うと結局同じ状況になってそうでぐうの音も出なかった...。